東京大医科学研究所の中内啓光教授や明治大農学部の長嶋比呂志教授らが
豚の膵臓(すいぞう)ができないよう遺伝子操作したブタの胚(受精卵)に
正常なブタの胚細胞を注入し、膵臓を持つ子ブタを誕生させたと、発表がありました。
将来はブタの体内でヒトの膵臓を作らせ、糖尿病患者に移植する治療の実現を目指している。
論文は米科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
実験には食用のブタを使用。膵臓ができないよう遺伝子操作した雄の白ブタ胚をクローン技術を使って多数準備した。正常な雌の黒ブタ胚の細胞を注入し、交じり合った「キメラ胚盤胞」を作製。仮親の胎内に入れ、黒ブタの膵臓を持つ雄のキメラの子を誕生させた。
中内教授らは2010年にマウスの体内でラットの膵臓を作ったと発表しており、
研究は一歩前進した。
ただ、膵臓をできなくしたブタの胚にヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を注入し、ブタの子の体内でヒトの膵臓を作らせることは、技術的に容易ではないと考えられている。
また、ヒトのiPS細胞を注入したブタ胚を雌ブタの胎内に入れて子として誕生させることは、操作を間違うと全身にヒトとブタの細胞が混在するキメラ動物を生み出しかねない。このため国内では、文部科学省が「特定胚の指針」で禁止しており、内閣府の総合科学技術会議が見直すか議論を始めたばかり。
中内教授は「ブタ胚に注入したヒトiPS細胞が内臓にだけ変わるよう操作することは難しくないが、実際にできるかは実験してみないと分からない。国内で指針が見直されない場合は海外での実験を考えないといけない」と話している。
(yahooニュース)